笹部隧道は、大正12年、能勢電気軌道(現:能勢電鉄)が一の鳥居〜妙見口間の延長線を建設する際に作られた隧道です。現在は全線に数多くのトンネルがありますが、当時は全線中唯一のトンネルでした。当時、能勢電鉄は財政に悩んでおり、隧道資金の用意も大変だったそうです。しかし、延伸工事で一番の大工事であった隧道建設。建設中に工夫が1名殉職するという事態もありました。会社側にしたら、全線開通の記念碑のような隧道だったのでしょうか。おそらく、ポータルの装飾もしたかったのだと思われます。ですが、前述の通り財政難で特別な装飾が出来なかったのだと思われます。一応、装飾は無駄に建設費がかかりますからね。僕の推測ですが、せめてこそポータルの煉瓦積みくらいは…と思ったのでしょうか、両坑口、フランス積みポータルの珍しい隧道です。
そして、2代目の笹部第一トンネルは昭和58年に完成し、この隧道は草木に埋もれてしまいました。 |
隧道諸元 |
隧道の寸法 |
■延長 150,88m (公式資料より引用) |
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使用されている煉瓦の寸法 |
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長さ平均228mm 幅(小口幅の平均)110mm 高さ平均59mm(mm未満切り捨て) |
写真右側の少し幅があるスペースの場所です。ここはどうやら隧道東口という旧離合場所だったそうです。 現在では特に利用はされておりません。 |
遂に東側坑口が見えてきました。現トンネルの笹部第一トンネルのすぐ側にあるため、電車からも見ることが出来ます。 僕がまだ小学生の小さかった頃、妙見山に行った際、窓から景色を見てた時にこの隧道を見た覚えがあります。弟に、「なんだろ、あれは?」の様な事を言うと、弟が「昔のトンネルだと思うよ。」と言った記憶があります。(この頃からオブローダー精神あったのかな?(笑)因みに、この時は何かの用水路かとしか思ってませんでした…。 そんな思い出がある隧道に、いよいよ探索する時がきたのです。 |
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煉瓦積みについてですが、全体がフランス積みと珍しく、『日本の廃道』編集長、nagajis氏曰く、両坑口がフランス積みのポータルは、全国でも殆ど無いそうです。しかも、近代土木遺産にも登録されてないそうで、今後に研究に期待がもてます。また、煉瓦と煉瓦の間のセメントの接着が無い場所が稀にあり、丁寧な積み方とは言えません。 |
しかし、見るからに積み方が悪い。曲がっていたり、煉瓦間の隙間から地下水がにじみ出た跡があったり、そして煉瓦1つ1つが元の形状を残してないものが殆どです。地盤がゆるく建設が大変だったそうで、その影響を受けたのでしょうか…。改修を受けた理由がわかってきました。 内部の煉瓦は赤く、ポータルとは違い赤いものが使われています。 |
しかし、見るからに積み方が悪い。曲がっていたり、煉瓦間の隙間から地下水がにじみ出た跡があったり、そして煉瓦1つ1つが元の形状を残してないものが殆どです。地盤がゆるく建設が大変だったそうで、その影響を受けたのでしょうか…。改修を受けた理由がわかってきました。 内部の煉瓦は赤く、ポータルとは違い赤いものが使われています。 |
隧道内の中央部はこのように、アーチの迫石に相当する部分のみが煉瓦となっております。
内部がコンクリ、煉瓦の2通りあるといった事以外は、内部には特に変わった特徴は見られませんでした。 隧道はほぼ直線の為、入口から出口が見えますし、また内部も真っ暗と言うほど暗く無いため、ライト無しでも、内部の煉瓦の存在を見受ける事ができます。 |
西側ポータル。是非、ズームの画像よりこの隧道のポータルを見てみて下さい。こちらも草木で荒れており、ポータルを完全に写す事が出来なかったが、同行してくれた友人が一番のベストショットを撮っていました(笑)
アーチは典型的な馬蹄型アーチ、煉瓦のアーチは5重で、特徴は何と言ってもシンプルなフランス積みのアーチである事。こちらも黒めの煉瓦が使われています。そして東側も同じ構造になってます。 この隧道には、他にも小さな特色がいくつかあり、後述で述べます。 おまけ:ポータル壁紙(二次配布禁止・個人の範囲内でご利用下さい。) |
迫石部分が煉瓦5重アーチ、迫受石以下はイギリス積みとなっております。 |
三段ごとに小口の幅の分、煉瓦とコンクリートをうまく重ねています。まるで歯車の様な構造ですね。部分的に「七五」サイズの煉瓦を使用し、見事なまでにコンクリートと煉瓦を融合してると思うと、少し感動しました(笑) |
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ポータル〜コンクリートの部分まではこうなっております。 草木が時間と共に、隧道の内部に入り始めています。まだ状態は良好ですので、しばらくはこのまま残りそうですね。
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また、この笹部隧道オフ会に多くの方に来てもらい、とても楽しい時間を過ごす事が出来ました。参加者一同、そして多くの資料を製作、提供して頂いたnagajis氏、どうもありがとうございましたm(_
_)m
(画像提供:nagajis氏、sudofoo氏、コルカタ氏、同行していた友人 資料・参考:nagajis氏、日本の廃道1月号「廃道を読む(7)隧道詳説参 煉瓦隧道」)
【注意】この探索は能勢電鉄の係員の元探索を行っております。現地は線路沿いでもあり川沿いのアプローチも大変危険ですので、無断に近づかぬようお願いします。無断に近づき賠償責任などを求められても、また怪我などをされても、当サイトは一切責任を負いません。
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